和膠(にかわ)

<和膠(にかわ)の発展における歴史>

膠の用途は、紙や木製品の接着が主で、研磨布紙、ガムテープ、マッチ、墨、岩絵具、電解製錬(銅、鉛、亜鉛の電解製錬の添加剤)があげられます。和膠生産が活発になるのは、明治30年(1894)の日清戦争勃発に伴うマッチ製造がきっかけです。それまではアメリカやヨーロッパからの輸入品を使用していました。兵隊さんにタバコが支給されるようになり、それに伴う需要の拡大が背景にあります。

マッチ用の膠は、接着力と耐水性が求められることから洋膠が好ましいのですが、高価であり量も少ない輸入品であったことから、和膠の上物が使われました。その後、家内製手工業での和膠の生産者が生産量の増大に伴い機械化を進めることで洋膠(ゼラチン)の製造を開始。機械の導入によって、小規模製造業者が淘汰されていった経緯があります。

 

<和膠(にかわ)の特性と使用用途>

膠の特性として温めると溶液になり、冷めると固形になる性質があります。バイオリンをはじめとした木管楽器には、接着剤としての膠が必須です。オルガンの鞴(ふいご)の接着剤としても、膠が必要です。製造業者は、修復が出来る事を前提としていたのかもしれません。

一時期、合成接着剤を使用していたのですが、演奏者からの要望なのか、製作者の要望なのかはわかりませんが、接着剤は膠に落ち着いています。

建材の接着剤としての需要も健在です。合成接着剤の場合、有機溶剤を使用しなくてはなりません。シックハウス症候群に対応するために合成接着剤のかわりに膠を使用する事があります。

膠の生産業者の廃業に伴い、膠が入手困難になった時期があります。膠を使用していた日本画家、書道家、美術修復家を中心として、膠の必要性の啓蒙と製造技術の保存に関する研究会(膠文化研究会)が発足しました。

この活動が契機となり、ゼラチン製造会社が和膠の製造を復活させ、供給しています。その結果、先に行われた宇治の平等院の改築や絵画の修復にも膠が活用されるようになりました。

 

<和膠と洋膠(ゼラチン)の違い>

和膠と洋膠(ゼラチン)の違いは、たんぱく質の純度にあります。その結果、接着力に違いが出来ます。

和膠と洋膠のどちらも、原料のほとんどが皮ですのでコラーゲンが主です。コラーゲン以外のたんぱく質や糖、少量の脂質が混在しているのが和膠です。一方でコラーゲン純度が高いのが洋膠(ゼラチン)とされており、和膠に比べて接着力が弱くなってしまいます。

ゼラチンはコラーゲンの変性物(立体構造が壊れている)です。温度が高い場合はゼラチンの分子が分散していますが、冷えてくると部分的に立体構造が戻ることで離水して固まります。固まる部分が均一でないので接着力にムラが出来ます。

和膠の場合、このムラの部分に夾雑物が絡まることで固まる強度を均一にするため、接着力が高くなると考えられます。時と場合により、純粋にしすぎるのも良くない場合がありますね。

 

膠模式図