皮から革へ

革の製造は、より純粋なコラーゲン線維にした後、さらに離水しながらコラーゲン線維間に架橋を導入することで、腐敗しない基材を作出する事です。難しい言葉で書いてしまいましたが、これが理系の文章ですね。

皮には、色んなものが付いています。表面には毛があり、体の方には脂肪や肉、血管も付いています。

皮の加工では、まず脱脂・脱毛し、不要な部分を削り取るという前処理を行うことが重要になります。次いで、皮の中に入っている腐りやすい成分を除く作業です。多くの場合、石灰に漬けたりピックリング(酸に漬ける)をしたりといった工程で、皮の中のコラーゲン線維の膨潤を促します。その結果、夾雑物(きょうざつぶつ)の除去とコラーゲン線維間に架橋剤が浸透しやすくなります。

3つ目の作業が鞣し(なめし)工程です。多くの場合、クロム鞣しが行われます。クロムは金属のメッキにも多く使われており、酸化防止効果の高いものです。最も安定的に架橋をコラーゲン線維の間に導入ができる方法で、皮革産業界におけるノーベル賞に匹敵する技術です。皮の性質は均一ではないので、クロムのような多様な手を持つ架橋剤は、革の大量生産を行う上での利点が大きい処理方法です。

クロムの挿絵

古典的な皮の加工では、タンニン鞣し剤が利用されてきました。ゲンノショウコウ、チャ、ウワウルシ、ハナスゲ、ヌルデなどのタンニン酸、没食子酸プロピル、ガレイック酸などの多種類のタンニンの混合物で、皮の状態を確認しながら行うという、職人の経験や知識が必要な技術です。職人さんたちは、鞣しの状態を確認するために、皮を噛んでいたそうです。柔さの確認ですね。

 

その後の加脂工程とは、架橋したコラーゲン間に柔軟性を与える事です。架橋のしすぎは革の柔軟性の喪失に繋がり、染色にも影響します。昔は、鞣した後、皮を良く揉むことで柔軟性を高めていたようです。

 

<皮革製品の過去と現代>

皮革産業の隆盛は、武具としての利用に始まっています。中国の春秋時代の兵車は、革で覆うことで防御機能を高めていたようで、皮の盾もあったようです。木製であれば強度はありますが、柔軟性が無いので割れてしまうことも有りますよね。その点、革であれば打撃の吸収が可能で、撃ち込まれた鉾や戟から自分を守れます。武具に使われるのも納得がいくものです。

近代になると革製造のための脱毛剤、鞣剤、染色剤、加脂剤などの開発は化学工業の発展に寄与しているため、現在の大手化学メーカーの多くが、革製造と何らかの関係を持っています。